都市地理学における制度論的視角

このような状況において,1970年代
の初期に開始されたコープ・コンヴァージョンにより,「インナーエリアの居
住者は放棄住宅を救い,コープ住宅に転換し,そこに住み続ける方向性を模索
しはじめた」(p、358)のである。

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コープ住宅の問題点としてはその閉鎖性があげられ,「コープ住宅に空き家
が生じるとき,ボードは入居希望者を審査する。一般的な入居資格をもつ者で
あっても,ボードが好ましくない人物として判断すれば,入居は拒否される。
(中略)コープ住宅組合は,それ自身の利益のためにしか動かず,社会的な問
題には貢献できないという批判」(平山;1993,p.362)があることが指摘され
ている。

このようなコープ住宅の背景となるコーポラティズムの概念に関して,西山
(1986)はパールによる都市資源の配分の決定を議論した都市管理主義からの
展開であるとしている。西山は,コーポラティズム論について私的所有と国家
管理の2つの特徴からなる経済システムであるとし,「国家が民間部門を援助
する関係から,積極的に指導する関係への変化である。この経済システムは具
体的には,パールが指摘するように,民間資本の投資を誘導しその代わりに税
と価格の所得政策を操作することである」(p.159)とした。この視角は,都
市地理学における制度論的視角に該当すると考える。ハウジングに関する都市
地理学的研究において,この観点がどのように見られているのか,わが国にお
ける既往の研究事例では成田(1992)が紹介したリンケージ政策に見いだすこ
とができる。

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中間所得層のコープ住宅への転換も

金倉(1992)は,ジェントリフィケーションとは対照的な一見矛盾する現象
である建物所有者の権利放棄あるいは管理放棄も,低所得層の住宅問題を象徴
的に示すものと指摘している。このようなジェントリフィケーションや不動産
放棄に対して,「コミュニティ・ペースト・ハウジングは低所得層の住宅を確
保するための戦術として,コープ・コンヴァージョンを発達させてきた」
が,厳密にはコープ・コンヴァージョンはジェントリフィケーションな
どによる中間所得層のコープ住宅への転換も含まれる。しかし,低所得層のた
めのコープ・コンヴァージョンは,ジェントリフィケーションの高質化の圧力
に対して,賃貸の放棄住宅のストックを修復し,コープ住宅に転換する方法で
あり,「居住者の相互関係を強調し,低所得層が安定して居住できるアフォー
ダブル住宅2)を生み出す方向に狙いがある。(中略)コープ・コンヴァージョ
ンは放棄住宅を修復して住みつづける,あるいは空き家の放棄住宅に入り込み,
そこに住みつく行動である」。

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平山(1993)によると,コープ住宅は住宅放棄への抵抗であり,1960年代
から70年代にかけてのニューヨークの低所得層の不安定な住宅ストックの状
態において,「インナーエリアでは,低家賃住宅の家主は近隣の荒廃,借家人
の低所得化,不動産税の増大,維持・管理コストの上昇などにより,合理的な
収益は期待できず,所有物件の“放棄”を選ぶようになった」。

一方で,ジェントリフィケーションにより低家賃住宅の高質化が促され,中間
所得層,高所得層の住宅,商業施設への転換が進み,高質化に起因する「立ち
退き」の被害を受けた世帯が急増した。

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